4Gamerにて、テクニカルジャーナリスト西川善司氏のPlayStation 4についてのまとめが掲載された。
Q:PS4のグラフィックス性能はどれくらいなの?
A:PS3の8倍くらい
PS4はx86 CPUとPC向けGPUを採用すると発表された
PS4のコアプロセッサとしては,AMDのAPUが採用された。
APUとは「Accelerated Processing Unit」の略で,消費電力とパフォーマンスのバランスを最重要視して設計された統合型プロセッサである。
そのGPUコアは,AMDの新世代GPUコアアーキテクチャ「Graphics Core Next」(以下,GCN)を採用することが判明した。CPUコアは「Jaguar」(ジャガーもしくはジャギュア)と呼ばれるアーキテクチャを採用したものだが,こちらについては後述する。
さて,GCNは,開発コードネーム「Southern Islands」(サザンアイランド)として知られてきたGPUシリーズ,Radeon HD 7000で採用されるアーキテクチャだ。ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)は,PS4のAPUが「18基のコンピュートユニット」を搭載するとしているが,GCNにおいて,コンピュートユニット「GCN Compute Unit」には,32bit浮動小数点スカラプロセッサ(=シェーダコア)「Stream Processor」(以下,SP)を16基一組として4組が内包されるため,PS4のAPU全体では,16×4×18=1152基のSPを搭載することになる。
この1152基という数は,Radeon HD 7800シリーズに属する「Radeon HD 7850」(1024基)と「Radeon HD 7870 GHz Edition」(1280基)の中間という計算だ。
また,公開されたスペックには,1.84 TFLOPSの演算性能を持つとあるが,SP数が1152基あるという仮定,GCNアーキテクチャではSPが1クロックで1積和算(2 Ops)を行えるという事実を踏まえると,「(1.84 TFLOPS÷2)÷1152」という計算式から,約800MHzという動作クロックも導き出せる。これは,Radeon HD 7850の定格860MHzやRadeon HD 7870 GHz Editionの同1000MHzに近い,現実感のある数字だ。
ところで,記憶力がいい人だと,「あれ? PS4のGPUのFLOPS値ってPS3のGPUと同じなの!?」と思ったかもしれない。
というのも,PlayStation 3(以下,PS3)を発表したとき,SCEは,「GeForce 7800 GTX」をベースとするGPU「RSX」の演算性能値を「1.8 TFLOPS」と発表していたからだ。
ただしこの1.8 TFLOPSという数字は,テクスチャユニットから何から何まで総動員してFLOPS値に含めるという,トンデモ性能値だった。今ではSCE関係者達も笑っているかもしれない。
せっかくなので,PS4が持つ演算性能値の計算方法と同じやり方で,今さらながらにPS3のGPUのFLOPS値を再計算してみよう。
GeForce 7800 GTX GPU。NVIDIAの現行世代アーキテクチャ「Kepler」(ケプラー)から見ると,おおざっぱな分類でも4世代前の製品となる
GeForce 7800 GTXは,頂点シェーダが8基,ピクセルシェーダが24基の固定振り分け式で,4-way SIMDのベクトルユニットを,頂点シェーダは1基,ピクセルシェーダは2基(デュアルで)有していた。そのほか,スカラユニットもそれぞれ搭載されているが,ベクトルユニットと同時に稼働できる機会は現実的には低いため,4-way SIMDユニットだけに注目する。もちろんこれも恣意的なものではなく,PS4のFLOPS値計算方法に則ったものだ。
なお,動作クロックは発表時こそ550MHzだったが,最終的にはひっそりとスペックダウンして500MHz動作となった。なので,以上を踏まえて計算すると,
•頂点シェーダ:(4-way SIMD×2ops)×8基×500MHz=32 GFLOPS
•ピクセルシェーダ:(4-way SIMD×2ops)×2基(デュアル)×24基×500MHz=192 GFLOPS
で,合計224 GFLOPSとなる。
なので,あくまで机上の計算におけるものではあるのだが,1.84 TFLOPSというPS4のGPUは,PS3のGPU比でざっくり8倍の性能に達していると見積もれそうだ。
また,公開された公式スペックの中に書かれていた,GDDR5メモリのバス帯域幅が176GB/sであるという情報からは,メモリ性能も推し量ることができる。Radeon HD 7800シリーズのメモリインタフェースは256bitなので,おそらくPS4のAPUにおけるグラフィックスメモリインタフェースも256bitだろうと“あたり”はつけられるが,仮に128bitだった場合,1bitあたりのデータレートが高くなりすぎる。その点256bitであれば,「176GB/s÷(256÷8)=5.5Gbps」という,それらしい値が求められるので,256bitインタフェースでデータレート5.5Gbps(動作クロック5.5GHz)というのが正解だろう。
ちなみにRadeon HD 7850とRadeon HD 7870 GHz Editionのグラフィックスメモリが持つデータレートは4.8Gbpsなので,この点はPS4がややがんばっている印象だ。
CPUとGPUでシェアするメモリを合計8GB搭載する
がんばっていると言えば,メモリ搭載量もそうで,公式スペックによれば8GB。このうちどのくらいをゲームランタイム用(≒ゲームの実行用)に確保できるのかは,OSの規模が見えないうえ,バックグラウンドでどういったタスクが動くのかも分からない現状で評価するのは早すぎるが,「予想よりも多い」という印象はある。
なお,比較用に挙げておくと,PS3のメインメモリは64bitインタフェース接続で搭載量256MB,帯域幅25.6GB/s。グラフィックスメモリは128bit接続で搭載量256MB,帯域幅22.4GB/sだった。つまり,PS4のメモリ性能は約7.8倍に向上しているわけだ。GPU性能とほぼ同じくらい引き上げられているわけである。